第42回日本脳神経外科コングレス総会
会長 武笠 晃丈
(熊本大学大学院生命科学研究部 脳神経外科学講座 教授)
第42回日本脳神経外科コングレス総会を、2022年5月12日(木)~15日(日)の4日間の日程で、大阪国際会議場にて開催させていただきます。熊本大学主催としては今回が初めてであり、大変光栄に存じますともに、例年、多くの会員の先生方に参加していただく学会であり、歴代の会長をはじめ多くの会員の方々が手塩にかけて育ててきた大切な学会でありますので、その責任の重さも強く感じております。私個人としましては、直接のご指導を賜る機会もありました故・佐野圭司先生が第1回の会を開催された本学会を、このように担当させていただけることとなり身の引き締まる思いです。
今回の総会の主題は「多様性と協調」といたしました。英語では diversity and inclusionに近い内容となります。多様性という意味では、ジェンダーや人種という点が近年よく言及されますが、本会におきましては特に、脳神経外科の領域毎に専門分化が進む昨今において、多様な専門分野の先生や、大学などのアカデミアや一般病院、開業医の先生といった多様な立場の学会員の先生が、一堂に会し、本コングレスの生涯教育という理念のなかで、幅広い領域の発展を学ぶことの意義に改めて注目したいと思います。各領域を横断的に学び、自身の領域に協調的に取り入れることで、会員の先生方の活動が一層発展すると考えており、そのような領域横断的な活動の助けになるような学会にできればと考えております。また、そのような学術的な協調、人と人との交流のなかでの協調の中で脳神経外科全体をさらに盛り上げいただきたいというような思いを込めております。私自身は、永らく脳腫瘍やがんの多様性に着目して研究をして参りましたが、どのような生物や組織であれ、多様であり、それらがうまく調和していることは、進化や堅牢さにおいて非常に重要な要素であるということは論を待ちません。日本脳神経外科学会もそのように、一層強く発展してほしいという願いを込めて、今回の主題を選ばせていただきました。ポスターのデザインも、様々な立場の先生方一人一人が、手を取り合って協調的に学会を支えて盛り上げることで、脳神経外科という大木が成長し、またこれが医学という大きな森を支えるものとなればという思いを込めたものとなっております。そして、主題にも沿うような形で、熊本大学の学会準備委員を中心として用意したプログラム案をたたき台として、今年より新しいメンバーとなった若いコングレス運営委員の先生方と相談しながら、プログラムを完成させました。
開催形式は、現地開催とオンライン配信のハイブリッド形式としております。新型コロナウイルス感染症の影響にて、ハイブリッド開催の学会が立て続くなかで、多くの方々がその良さにも気付き、慣れてきていることと思います。ただ、ワクチン接種率が徐々に高まり、諸外国においてもこれまでの行動制限が解除されはじめつつあるなかで、今後はwith/postコロナ時代の、持続可能な学会開催形態の模索も求められるものと考えております。本会は、日本脳神経外科学会学術総会と並び、多様な専門領域・多様なお立場の脳神経外科の多くの先生方が一堂に集まる希有な会の一つと認識しておりますので、今回のテーマでもあります「多様性と協調」を、対面交流を通して実現するための、またとない機会とも考えます。そこで、新型コロナウイルス感染症という不確定要素も大きいですが、その点に配慮しつつ、現地開催の良さも再考し、少しでも会員の皆様への有意義な交流の場の提供ができればと考えておりますので、ご理解賜れますと幸いです。
「多様性と協調」を主題とした本学会の“特別企画”として、学会3日目の5月14日(土)に、3つのプレナリーセッションと関連した特別講演を企画いたしました。特別企画1では「多様な脳神経外科関連領域との協調」として、脳神経外科を一層発展・充実させるために大きな役割を果たす関連領域と思われるもののうち、特に近年注目を浴びて進歩も著しいロボット、AI、ビッグデータ、ゲノム医療、AYA世代診療のそれぞれの領域の先駆者の先生方にご講演いただきます。特別企画2とそれに関連する特別講演では「多様化する未来の医療における協調」として、大学における教育・研究、脳神経外科学会、脳卒中、がん研究のそれぞれの分野のリーダーとして未来への鍵を握られている先生方に、各分野が目指す方向性や課題を、多様性と協調という観点を交えつつご講演いただきます。このうち、がん研究に関しましては、国立がん研究センター研究所長の間野博行先生に特別講演という形でご講演をお願いしております。特別企画3では「多様化する脳神経外科専門分野における協調」として、脳神経外科専門分野のうち、脳血管障害、良性脳腫瘍、悪性脳腫瘍、てんかん・機能外科、医用工学などの分野で、二刀流、三刀流とも言うべき多彩な能力にて活躍する演者の先生方より、それら多領域の有効的な融合活用法や課題、未来の展望についてご講演いただきます。
多様な職場やお立場の先生方に幅広く学んでいただけるようなセッションも準備しております。学会初日5月12日(木)には、例年通り“専攻医セミナー”を開催し、これから脳神経外科専門医資格取得を目指す先生方に、様々な領域の心構えや基礎知識を学んで頂きます。同日は、“ビデオ教育セミナー”として、手術エキスパートの先生方からの講演シリーズも用意しております。“プレナリーセッション”では、各専門領域に特化したセッションに加え、学会最終日の5月15日(日)には、「脳神経外科日常診療」として、職場や立場に関わらず多くの先生にとって共通して必要とされる、認知症、COVID19、女性のキャリア形成、働き方改革、インフォームドコンセント等について学ぶセッションも企画しております。
過去2回の本学会では開催困難であった、“ハンズオンセミナー”も、学会初日5月12日(木)に計画しております。なおハンズオンの開催枠においては、日本脳卒中の外科学会技術認定医教育セミナー、日本神経内視鏡学会主催講習会、脳血管内治療、脊椎・脊髄の他、悪性脳腫瘍をsubspecialtyとして活動を始めた先生方が基礎・臨床技術の重要事項を集中して学ぶためのセミナー開催も企画いたしました。
“海外招待講演”は、カナダ・トロント大学脳神経外科主任教授であります、Gelareh Zadeh先生にお願いいたしました。新進気鋭ともいえます女性脳神経外科医であり、ワークライフバランスをとりつつ、脳腫瘍(悪性腫瘍・頭蓋底腫瘍)を中心とした臨床を精力的にこなしながら、基礎研究でも素晴らしい成果をあげられております。また“文化講演”では、「多様性と調和」を基本コンセプトの一つとして昨年夏に開催された、東京オリンピック・パラリンピック2020にて大きな役割を果たされた、日本オリンピック委員会(JOC)会長・国際オリンピック委員会委員・ロサンゼルスオリンピック柔道金メダリストの山下泰裕氏にご講演をお願いしております。スポーツを通して得られる感動を日々のエネルギーとしている私にとりとても楽しみなご講演であり、オリンピックでの感動と「多様性と調和」の雰囲気を、再び会員の皆様にもお届けできれば大変嬉しく存じます。
本会が会員の皆様ひとりひとりにより作り上げられ、多くの皆様にとって有意義なものとなることを願っております。新型コロナウイルス感染症の状況を判断しつつ、現地参加にせよWeb参加にせよ、多くの先生方にご参集いただけますよう心よりお願い申し上げます。
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